厚生労働省は令和6年度(2024年度)の「過労死等の労災補償状況」を公表し、仕事上のストレスや過重労働により申請・認定された労災件数がいずれも過去最多となったことが明らかになりました。特に、精神障害による労災認定件数は初めて1,000件を超え、その主な原因はパワーハラスメントなどのハラスメントや仕事の内容・量の変化であることが指摘されています。
労災申請・認定ともに増加
令和6年度における労災の申請件数は4,810件で、前年度から212件増加。労災と認定され、補償が支給された件数は1,304件で、こちらも過去最多となり、前年より196件の増加でした。
内訳を見ると、精神障害に関する労災認定は1,055件にのぼり、前年度から172件増加し、初めて1,000件を超える事態となりました。
精神障害の労災認定原因で最も多かったのは『パワハラ』
精神障害の労災認定者(1,055人)に対する主な原因の内訳は以下の通りです。
- ・上司などからのパワーハラスメント(パワハラ):224件
- ・仕事内容・仕事量の大きな変化:119件
- ・顧客や取引先、施設利用者等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント):108件
- ・セクシャルハラスメント(セクハラ):105件
- ・業務に関連した悲惨な事故や災害の体験・目撃:87件
ハラスメントや急激な業務環境の変化、顧客対応によるストレスが、精神的負担の大きな要因であることが明らかになっています。2023年度には労災の認定基準が見直され、カスタマーハラスメント(いわゆるカスハラ)などによる業務上の負荷によって精神障害を発症した場合も労災申請の対象となることが明確にされたことが、認定件数増加の一因と考えられます。
自殺(未遂含む)は88件、前年より増加
精神障害による労災認定のうち、自殺または自殺未遂の件数は88件で、前年より9件増加しました。命に関わる深刻なケースが増加しており、現場のメンタルヘルス支援体制の強化が急務です。
脳・心臓疾患も依然として高水準
過重労働が原因とされる脳・心臓疾患の労災認定は241件で、前年度から25件増加しました。このうち、死亡件数は67件で、前年度より9件増加しています。
支給決定件数は業種別で「運輸業、郵便業」が88件と最も多く、次いで「宿泊業、飲食サービス業」28件、「製造業」24件の順に多くなっています。
職場のストレス要因が多様化し、特にハラスメントが精神的な健康に与える影響の大きさが改めて浮き彫りになりました。企業は、従業員の心身の健康を守るため、より一層のハラスメント対策や労働環境改善が求められます。