大企業と中小企業が共に成長できる「公正な取引環境」を目指して
働き方改革の推進により、多くの大企業・親事業者で長時間労働の削減などが進んでいます。
しかしその一方で、こうした取組が下請・中小事業者に「しわ寄せ」を生じさせてしまうケースが見られます。
「適正なコスト負担を伴わない短納期発注」や「急な仕様変更」などが行われると、
中小企業側の労働時間が長くなり、従業員の健康障害や経営への悪影響を招くおそれがあります。
こうした事態を防ぐため、厚生労働省は、11月を「しわ寄せ」防止キャンペーン月間と定め、集中的な周知・啓発活動を行っています。
「しわ寄せ」とは?
「しわ寄せ」とは、取引上の力関係などにより、親事業者側の負担や課題が下請・中小企業に転嫁されることを指します。
- ・適正なコスト負担を伴わない短納期・急な発注
- ・発注内容の頻繁な変更ややり直しの強要
- ・工期を不当に短く設定する
- ・荷主による長時間の荷待ち
- ・納期や工期の過度な年度末集中 など
これらは中小企業の生産性や働き方改革を阻害するだけでなく、社会全体の健全な取引関係を損なうことにつながります。
「しわ寄せ」防止キャンペーンの主な取組
厚生労働省では、中小企業が安心して働き方改革を進められるよう、関係機関と連携してさまざまな取組を進めています。ポスターやリーフレットの掲示、特設サイトの更新、インターネット広告などを通じて「しわ寄せ」防止に関する周知・啓発を行っています。
また、業所管省庁や都道府県、労使団体への協力依頼を実施するとともに、都道府県労働局が「しわ寄せ」を生じさせるおそれのある企業を訪問し、改善に向けた要請を行うなど、関係機関が一体となって取り組みを進めています。
法制度に基づく企業の責務と配慮
【労働時間等設定改善法(厚生労働省所管)】
事業主は、他の事業主との取引においても、長時間労働を助長する短納期発注や頻繁な発注変更を行わないよう配慮する必要があります。
<実践すべき取組例>
- 1.週末発注・週初納入、終業後発注・翌朝納入等の短納期発注を抑制し、納期の適正化を図ること。
- 2.発注内容の頻繁な変更を抑制すること。
- 3.発注の平準化、発注内容の明確化その他の発注方法の改善を図ること。
【受託中小企業振興法(中小企業庁所管)】
「振興基準」では、委託事業者と受託事業者の望ましい取引関係が示されています。
<主なポイント>
- ・やむを得ず短納期発注を行う場合は、残業代などの適正なコストを委託側が負担する
- ・中小企業の「働き方改革」を妨げる不利益な取引を行わない
- ・発注内容を明確にし、長期的・安定的な発注計画を提示する
- ・原材料費・エネルギーコストの上昇分は柔軟かつ適切に価格転嫁する
さらに、公正取引委員会や中小企業庁と連携し、下請法に違反するおそれのある事案には厳正な対応を継続していきます。あわせて、事例集(いわゆる「べからず集」)の活用や、全国の「下請かけこみ寺」による相談支援についても周知しています。
<引用:厚生労働省 「しわ寄せ」防止キャンペーン
https://work-holiday.mhlw.go.jp/shiwayoseboushi/>

